藤次郎さんは、おそらく脚気で亡くなっていると各考察から推論されています。
日清戦争での病死者は戦死者より多かったと、ゴカムで杢太郎さんが言ってましたよね。
脚気を発症すると、抹消神経障害による倦怠感、痺れなどを経て重症化、心臓機能の低下から死に至る。
当時はまだ、脚気がビタミンB1欠乏から来る病気だと解明されていませんでした。
飯には困らないから、と言って陸軍に誘った杢太郎さんでした。
だけど軍での病気は、食事に白米以外の栄養が欠乏していたからに他ならない。
そんなの知ってしまってたらまた、自分を責めてしまうだろうな・・。
私が大昔から好きだった漫画「栄光なき天才たち」というのがございます。
この漫画に、ビタミンB1の発見抽出、そして脚気への効果を発表した化学者のストーリーが載っています。
農芸化学者だった博士から発表された論文は、プライドの高い医学会から認められず、臨床実験をさせてもらえないまま時は過ぎます。
その後、世界的にビタミンブームが起き、そのきっかけを作った日本人のこの研究は、逆輸入される形となります。
火付け役の博士は正当な評価を受けることなく、ノーベル賞とかを後進の化学者たちが受賞することになっていきます。
いや、それはさておき・・
私はゴカムで藤次郎さんを亡くした話を聞いた時(もう、菊田さんから自分が直接聞いたような気になってる)、この「鈴木先生の物語」を思い出していました。
玄米食の人に比べて、白米食の人ははるかに脚気患者が多いこと。
当時は原因も治療もままならない、不治の病として猛威を振るっていました。
兵隊さんの命をボコボコと奪った病にも関わらず、「部外者からの勝手な研究で何がわかる」と発表を突っぱねられたようなことが、漫画には描いてあります。
くだらない権力争いや、ちんけなプライドで、本当に大事なこと(この場合は、脚気を治すという目標)に全く目をやれないのは日本のお偉い人のダメなとこで、大昔から変わらないんだな〜って思えます。
ついでに言うと、彼らの健康を整えることが、結局は兵力増強につながる。
軍もそういうことに関心無かったのかな。
揃いも揃ってそういう方に頭が回らない〇〇ばっかだったのかな、なんて、つい想像してしまいます。
鶴見中尉(当時は、少尉か・・)のため息も、分かる気がします。
「あ〜〜〜〜〜くだらん、中央にはうんざりだ」ってことですよね・・・
さて、自作に藤次郎さんも、出て来ます。
藤次郎さんは農協の人。
のらぼう菜をPRしています。
原作では、ビタミン欠乏症で亡くなりました。
大切な、杢太郎さんの弟さんです。
ウチの箱庭のなかでは、美味しい地元野菜をたくさん食べているだろう。
そしてビタミンたっぷりの、ピッカピカに健康的な人生を送っているんです。
そしてお兄さんと共に白髪が生えるまで、兄弟仲良く長生きしていくんだろうな。
そんな思いがちょっとだけ、含まれています。