この街では、来週選挙があるんだそうだ。
飲み屋に、地元民は少なかった。
今時何が火種になるか分からないので、最近投票前はしばらくそんな傾向にあるらしい。
旅人や、隣町からワザワザ好きで飲みに来るような客同士には、そんな珍しい夜も有り難いような。
大将は常連さんに大人気で、普段は元気印がモットーだ。
その大将が低く喋る、渋い響きの暖かい声を久々に聞いた。
10数年前くらいからまた、群来が見られるようになっている。
今のニシンは明治から昭和初期のニシンに比べると、脂の量がグッと少ないさっぱりした味わいらしい。
甘露煮までにしてしまえば、ほぼほぼ味わいは、変わらないかもしれない。
だけど明治の人が食べたのは、もしかしたらもっとふかふかで、ジュワッとしていたのかな・・
などと空けて昼、今まさに美味しい鰊蕎麦を口に入れながら想像する罰当たりな週末だ。
さっぱりニシンの恩恵もあるという。
保存技術の進歩もあるが、「ニシンの握り寿司」が食べられるようになった事だ。
それでもトロリとコク深い味で、これ以上すごい脂なら寿司はちょっと、確かに無理なんだろう。
イカも秋刀魚も、もしかしたらまた来るようになるかもしれない。
ただニシンの前例を思えば、今の美味しさと次の美味しさはきっと変わるって事だ。
今当たり前に食べているものでも、いつ無くなるか分からない。
自然の恵みは、心して食そうと思う。